嘆きの女神パンデミックと小惑星セドナのお話
掲載日時:2009.05.19 14:00 コメント [0] , トラックバック [0]
21世紀に入ってからこっち、太陽系のお約束ごとはいろいろと変わってきました。
とりわけ、海王星より遠いところにある天体は(Trans-Neptunian Object=TNO)は取り決めが変わって、冥王星が準惑星に降格されたり、エリスやクワオワが名乗りを挙げたりと、大わらわだった模様。
観測技術の発達とともに、太陽系の外縁(いわば網走番外地)が、とりたてて寂しくもないとこだって、バレちゃったんですね。
NASAが冥王星の外に小惑星「セドナ」を発見してからすでに6年が経とうとしています。最も太陽から遠ざかる太陽系天体のひとつといわれ、その名前はカナダのイヌイットの女神に由来するのだとか。太陽光の届かない厳寒の地の星であることも手伝って、暗く冷たい海の底に眠る彼女の名が選ばれたのでしょう。
さて、セドナは上に挙げたTNOのひとつなのですが、由来となった神話があります。
イヌイットの娘・セドナはひょんなことから、犬と相思相愛に。しかし周囲の逆鱗に触れ、恋人との逃避行が始まります。父の追っ手をかいくぐるも、北極海であえなくワンちゃんは謀殺され、セドナは絶対絶命のピンチに。そんな彼女の身を匿ったのが鳥男でした。犬の次は鳥かよ! と、憤慨する父親はカヤックで再び娘を奪還します。が、洋上で鳥男の逆襲に遭遇。舟から振り落とされまいと、カヤックのへりにしがみつく娘の形相に父は恐怖し、一本、また一本と娘の指を切り落とすほかありませんでした。かくしてわが子は海に沈み、その指からは、アザラシや、セイウチが生まれたということです。
このようないきさつを経て、セドナは暗く冷たい海の底に眠る女神となりました。
イヌイットの神話では、海が荒れるとそれは怒れる彼女のしわざである、とも。
櫛けずる指を失った哀れな少女を慰めるため、シャーマンたちは海に潜り、彼女の髪である海藻を梳くことで鎮魂としたのだとか。
いやはや大団円とはほど遠い。異類婚姻譚の幕引きはいつだって悲劇です。
現在、セドナさんは牡牛座に滞在中。
占星術では、天体の発見と象意の確定には10年ほどかかるそうですから、まだその意味を取り沙汰するのは、早すぎるのかもしれません。
参考までに挙げておきますと、革命と刷新の星、天王星発見(1781年)から約8年後にフランス革命(1789年)が起こりました。
夢と夢幻、アルコールを意味する海王星発見(1846年)から10年ほどで、産業革命と石油の採掘(1859年)が試みられています。
そして極限とプルトニウムを象徴する冥王星発見(1930年)から9年後に第二次世界大戦(1939年)が勃発したことは、皆さんも記憶に新しいことでしょう。
となると、ここ数年の間にセドナの象意を確定するような出来事が起きても不思議ではありません。
ちなみにこちらのサイトSEDNAでは、2003年のセドナ発見時に世界中で流行した鳥インフルエンザとの関係についての言及がなされています(なるほど、鳥の災いをパンデミックと見立てましたか)。
死してなお、暗い波間を漂う嘆きの女神が発するシグナルに、ここしばらくは耳を澄ませたいと思います。
それはさておき個人的には、先住民の魂を形に刻みつけた、イヌイットアートなどに触れてみようかな、などと画策中。

陰鬱な神話とは裏腹になんだかひょーきんで可愛いじゃないですか。
こんなアザラシのおかんが、セドナさんというならならば、なんだかきっと、彼女とも仲良くやっていけそうな気がします。
赤坂のカナダ大使館で6月17日まで、展覧会が開催されているそうですから、ご興味のある向きはぜひ。
[SEDNA、カナダ先住民アート展:高円宮殿下妃殿下所蔵品]
(逢坂杏)

芳垣 宗久 (著)
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