おばけちゃんのこと
掲載日時:2009.05.06 18:00 コメント [0] , トラックバック [0]

Tさんはピアノの調律師かつ、鍼灸の資格を持つ女性です。
ちっこい体躯ながら、スタンウェイでもグロトリアンでもピアノのことならかかってこいや、ついでにオーナーさんの身体も調律したるわあ、とまあ威勢のいいことこのうえない(笑)。
もともと懇意にしている鍼灸院さんがありまして、やれ肩こりだ、腰痛だと、月に何度もお邪魔しているうちに、先生やお弟子さん方とお話が弾むようになったのです。
で、このTさんは、ここを主宰される先生の一番弟子。
彼女は、鍼灸に飽き足らず、気功の技術も心得ている最強のスタッフなのです。
先日も、腰椎のあたりがドズーンと重くなりまして、うわたた、ヘルプミーと急遽、鍼灸院に駆け込んだのです。とにかく腰が冷たく重ッ! 椅子に座るのもままなりません、と訴えると、いつものように、ベッドに案内されます。マッサージローラーを内臓した治療用のベッドには、骨格のゆがみを取る機能があります。来訪者はこのベッドに身体を横たえてから、本格的な治療に移るのが常です。
(このベッドに揺られていると、心身ともにリラックスして、うっかり寝落ちするほどのスグレモノだったりします)
「おっかしーなー。オスピナもたっぷりかけたし、3番鍼も打ったのにな」とTさん。
オスピナとは、さきほどのローラベッドのこと、3番鍼とは鍼灸用の鍼の中でも、比較的直径が太く、 即効性の高いものを指しています。気心の知れた相手ということで、Tさん奮発してぶっとい鍼を打ってくれたんですね。
ちょっ、まっ、ギブギブギブ...ッ! などと悲鳴をあげるわたくしにはおかまいなしに、
Tさんはひとりごちながら、鍼を打っていきます。
3番鍼って、患部にストッと入るだけで目の奥に火花が飛ぶような衝撃の代物なんですね。1本、また1本と背中に針は増え、診察室には断末魔の叫びが響きます。ところが身体のすみずみを揉みほぐされ、極太針を打たれても、その日に限っていっこうに痛みがおさまりませんでした。しかも心なしかTさんの表情が険しくなっているような。
診察ベッドの前で、腕組みして仁王立ちする彼女と、叫び疲れてもはや微動だにしない針山。
ふつー、ここまで手厚く施術されると腰の痛みは一発で霧散しちゃうのですが、その日に限って、症状はぴくりとも改善しませんでした。 相変わらず、腰を中心に身体が氷水に浸かっているかのよう。
すると、脇でみていたTさんのお師匠が、すかさずわたくしの腰に手を当てました。
「あれ? なんか冷たい」
しばらくふたりは顔を見合わせた後、示し合わせたように、ああなるほどね、といった表情をされました。そして、物理療法をハンドヒーリングに切り替えたところ、あっという間に身体が軽くなり、15分ほどで治療終了。
診療終わって、日が暮れて。
診察室の椅子に腰掛けて、お茶をいただいているときに、さきほどの微妙な間はなんだったのかと、思い切っておふたり訊ねてみました。
「身体に手を当てたとき、せっかく入れた気がどっかへ抜けてたんだよ。たとえるなら、ブラックホールみたいな感じだね」
と、慎重に言葉を選ぶ師匠。
「違う、違う、あれはおばけちゃんだって。オーサカがどっかでくっつけてきたんだよ」
「おばけちゃんとな!?」
えーと、えーと、えーと。
もしかしてわたくし、憑かれてたんですか(泣) 。
(思い当たるフシありまくり。 あそこか? それともあそこか!?)
おふたりの職業は鍼灸師ですが、往々にしてこのような場面に出くわすことがあるのだとか。 しかし、ふたりともあんまり動じた様子がないんですね。
いわく、 「おばけだろうが、なんだろうが、悪いところは治すがな」らしいです。
とはいえ、あんまり頻繁に憑かれるのもアレなので、 当座の対処法として、野口整体で有名な活元運動というのを教えていただきました。
(自律運動を促すエクササイズみたいなもんです)
...そのうち、マジで「おばけ」退治にも保険診療が効く時代がくるのかもしれませんね。
(逢坂杏)
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掲載日時:2009.05.06 18:00 コメント [0] , トラックバック [0]
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