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「霊界を見てきた男」アンドリュー・ジャクソン・デイヴィスについて―スピリチュアル史解説[コラム]

関連タグ : 伊泉龍一

掲載日時2009.12.11 18:00   コメント [0] , トラックバック [0]

  by マイスピ編集部

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もし肉体の死が終わりではなく、その後もその人の魂が地上とは別の世界で生き続けるのだとしたら、そこはいったいどんなところなのでしょうか? 

言うまでもなく、通常の経験科学的なアプローチでは、死後の世界があるかないかを確かめることは不可能です。そのため、死後の世界が存在するとして、それがどのようなものなのかということについては、それを「見てきた」という人の発言に頼るしかありません。

西洋の歴史上、あの世を「見てきた」と主張し、その様子を最も克明に描写した人物と言えば、以前のコラムでも紹介した18世紀のスウェーデンの視霊者スウェーデンボルグがその代表です。スウェーデンボルグは日本でもすでに多く紹介されているため比較的ポピュラーですが、同じく霊界を語った19世紀アメリカのもう1人の人物アンドリュー・ジャクソン・デイヴィスについてはどうでしょうか。日本での知名度は明らかにスウェーデンボルグよりも低いものの、近代スピリチュアリズムに対して、より直接的に大きな影響を与えたという意味で、実はデイヴィスは歴史的に非常に重要な人物だと言えます。

今回は、スピリチュアリズム・ムーヴメントの先駆者であるアンドリュー・ジャクソン・デイヴィス(Andrew Jackson Davis, 1826-1910)について簡単に紹介したいと思います。
 

■ アンドリュー・ジャクソン・デイヴィスの生い立ち

1826年8月11日、ニューヨーク州オレンジ・カウンティのブルーミング・グローヴ生まれ。デイヴィスの生い立ちには、とりわけ特別なものはありません。むしろ、人生の前半期を輝かしい科学者として成功を収めたスウェーデンボルグとは逆に、貧しい家庭環境のため、乏しい教育しか受けることができないままの少年時代を過ごしました。

しかし無学で平凡な人生を送っていたデイヴィスは、あることをきっかけにして、あっという間に幻視者としてその名声を高めるようになります。それはデイヴィスが当時住んでいたポキプシーにやってきたメスメリズムのレクチャー&デモンストレーションに参加したことでした。


■ デイヴィス預言者、誕生

メスメリズムによって「磁気睡眠」の状態へと導かれたデイヴィスは、やがて驚くべき超感覚的能力の数々を発揮するようになります。特に、病人の体の中の悪い箇所を指摘し、その原因をつきとめるなどの医学的透視能力は、すぐにポキプシーの住人たちの間の大きな噂となっていきます。さらにその後、本人の自伝によれば、1844年3月、古代ギリシャの医師ガレノスの霊、そして他ならぬスウェーデンボルグの霊と出会うことにより、霊界を語る「預言者」としての使命を授かることになります。

翌年から、デイヴィスは、磁気睡眠下における「最も高度なコンディション」と自ら呼ぶ意識の状態の中で、霊界についての情報をはじめ、様々な啓示を語りはじめます。15か月の間に157回行われたセッションを通して語られた内容は、ユニヴァーサリストの聖職者ウィリアム・フィッシュバウによってディクテーションされ、1847年の夏、『自然の原理、彼女の聖なる啓示、そして人類への声』(The Principles of Nature, her Divine Revelations, and a Voice to Mankind)と題された782頁にも渡る大部の書物として出版されました(以下、『自然の原理』と呼びます)。

出版後すぐにデイヴィスは、あらゆる方面で話題の人となります。なかでも真っ先に注目したのは、熱烈なスウェーデンボルグ主義者であるジョージ・ブッシュ(1769-1854)でした。ブッシュはデイヴィスのレクチャーの模様を『ニューヨーク・トリビューン』紙へと繰り返し寄稿し、デイヴィスの擁護、そしてその能力への驚きを何度も表明しています。

また、スウェーデンボルグ主義者以外にも、フランスの社会思想家シャルル・フーリエの信奉者であり、合衆国におけるそのスポークスマンとも言うべきアルバート・ブリスベーンやパーク・ゴドウィンのようなフーリエ主義者たちもデイヴィスの初期のレクチャーに参加しています。

さらに、トランスセンデンタリズムの中心人物であり、その実験的共同体「ブルック・ファーム」の創設者の1人であるジョージ・リプリーも、「ハービンジャー」紙の中で7頁にも渡るデイヴィスの『自然の原理』のレヴューを書き、「文学史上、最も卓越し驚くべきもの」とそれを称えています。

スウェーデンボルグ主義者、フーリエ主義者、トランスセンデンタリスト。そういった人々が、デイヴィスの啓示に注目したのには理由があります。そのひとつは、デイヴィスの啓示の内容というのが、それら3つの思想をミックスしたようなものとなっていたことによります。ただしそのことは、デイヴィスへの注目と支持を集める理由となったものの、一方ではデイヴィスへの批判や疑惑を生み出しました。

たとえば、霊的領域から超自然的なやり方で得た(あえて今日の言い方を使えば「チャネリングして得た」)ものと本人は主張しているけれども、本当のところ、それは単にスウェーデンボルグ主義、フーリエ主義、トランスセンデンタリズムの思想をつぎはぎしたものに過ぎないのではないか、と。

確かにデイヴィスの語る霊界の内容は、スウェーデンボルグのそれにそっくりです。もちろん、デイヴィスの熱心な擁護者ならば、これを単なるスウェーデンボルグの著作からの影響と見るのではなく、デイヴィスもスウェーデンボルグも共に同じ霊界の真実を目撃したのだから、内容が類似するのは当然ではないか、という反論が出てくるでしょう。だとしたら、今度は逆にデイヴィスとスウェーデンボルグの記述が、完全に一致しなければならなくなるはずです。しかし、デイヴィスの霊界の記述はスウェーデンボルグに似ているにも関わらず、いくつかの点で異なっているところも存在します。


■ デイヴィスのいう「地獄の存在」とは

2人の預言者の間の決定的な違いは、あの世での地獄の存在についてです。デイヴィスもスウェーデンボルグもともに霊界を6つに分ける点は共通しているものの、スウェーデンボルグはそのうちの3つを地獄として語り、デイヴィスはそれを否定しました。デイヴィスによれば、

「6つの天界は上に行くほど美と調和と叡智に満ちてくるが、その下方の3つの領域は相対的に劣っているだけで決して地獄ではない。永遠の罰を与える地獄は存在しない代わりに、すべての人間が常に高次の領域へと進化し続け救済される」

とデイヴィスは説明しています。


その他にも、デイヴィスの語る宇宙創成論を見ると、そこには明らかに当時のポピュラー・サイエンスの諸見解からの影響もうかがわれます。こういったことは、デイヴィスの作品が超自然的なソースから来たものであることを、当時の懐疑派が否定するのに十分な理由となりました。

実のところ、こういった形での批判、すなわち作品のソースを超自然的なところから、ありふれた世俗的なところへと引き下ろし、その価値を減じてしまおうとするやり方は、デイヴィスに関してだけではなく、「チャネリング」で得たと称される文書全般に対して、懐疑派が繰り返し取る典型的な態度です。

仮に懐疑派による否定論を受け入れたとしても、無学な若者があらゆる知識の詰め込まれたこのような長大な書物を作り上げたということ自体は、驚くべきことだと言わざるをえないでしょう。スピリチュアリズムに関して常にクリティカルなスタンスを崩すことのない研究家フランク・ポドモアでさえ、『自然の原理』に対して次のようなコメントを残しています。それは「明らかに十分な教育を受けていない人物の作品」であるけれども、その本の「質」は「その欠点以上に注目すべきものがある」。実際そこにあるのは、明らかに当時の天文学、地質学、考古学、聖書などに関する広範囲な知識の集積なくしてあり得ないような論述です。

デイヴィスの『自然の原理』のソースがいかなるものであるにせよ、歴史的な観点からすると、それは依然として大きな意味を持っています。というのも、この後すぐの1848年のニューヨーク州ハイズヴィルという村でのある出来事がきっかけとなりに始まる19世紀後半のスピリチュアリズム・ムーヴメントの中で、デイヴィスの語った内容は、なによりも重要な役割を持つことになります。

死者たちの霊は、肉体の死後、どこに行って、どんな生活をしていて、その後どうなっていくのか? という当時のスピリチュアリストたちの問いは、デイヴィスによる霊界の描写を読むことによって埋められました。すなわち、当時のスピリチュアリストたちの考えるあの世の一般的なイメージとは、スウェーデンボルグによる霊界を改訂したかのようなデイヴィスの描写(あるいはデイヴィスが実際に「見た」ものの描写)が元になって形作られていくことになるわけです。

「19世紀合衆国のスウェーデンボルグ」とも言うべきアンドリュー・ジャクソン・デイヴィス。その近代スピリチュアリズム史への大きな影響については、まだまだ書き足りないところはありますが、長くなってしまいましたので今回はこれぐらいにしておきます。


アンドリュー・ジャクソン・デイヴィスシャルル・フーリエ

(伊泉龍一)


 精神科学から見た死後の生 (単行本)ルドルフ シュタイナー (著), Rudolf Steiner (原著), 西川 隆範 (翻訳)
精神科学から見た死後の生
ルドルフ シュタイナー (著), Rudolf Steiner (原著), 西川 隆範 (翻訳)

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