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死者の霊がこの世で大騒ぎした時代―スピリチュアル史解説[コラム]

関連タグ : 伊泉龍一

掲載日時2010.01.15 18:00   コメント [0] , トラックバック [0]

  by マイスピ編集部

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「死は終わりではない。肉体を抜け出した霊(スピリット)は別の世界で生き続ける。そしてしばしば地上のわたしたちの世界へとメッセージを送ってくる......」

19世紀後半の欧米で、そのような信念を持っていた人は、一般的に「スピリチュアリスト」と呼ばれていました。そしてその時代は、おそらく歴史上、最も濃密な形で地上の人間と死者の霊との交流が行われた記録の残っているときだと言えるでしょう。

今回は、今日以上に「スピリチュアル」的なものが広く流行し、驚く程多くのスピリチュアリズムの信奉者を生み出した19世紀後半の「スピリチュアリズム・ムーヴメント」の起こりについて書いてみたいと思います。

ことの起こりは、ニューヨーク州ハイズヴィル(ハイズビル)という小さな農村へと引っ越して来たフォックス家の周りで起こった「ポルターガイスト」からはじまりました。

この出来事は、「近代スピリチュアリズム」の幕開けとしてあまりにも有名なお話です。ただし、今日流通しているそのストーリーの多くは、しばしば後の脚色が混じったものとなってしまっています。したがって、ここではそれらのストーリーのそもそものソースである、事件の起こった1848年の4月に、E・E・ルイスというジャーナリストによって、当事者たちの署名入りで、その供述をまとめた40ページのパンフレット『ジョン・D・フォックス氏の家での不可解なノイズの報告(A Report of the Mysterious Noises Heard in the House of Mr. John D. Fox)』を元に、改めて出来事の概略を紹介していきたいと思います。
 


ハイズヴィルにフォックス家が引っ越してきたのは1847年12月のこと。

そして、その翌年の3月の後半から不可解な出来事がはじまりました。鳴り響く不気味なノック、天井の物音、ドアや壁になにかがぶつかる音、ベッドのフレームやテーブルを振動させるほどの衝撃等、それらは2週に渡って毎晩続き、一家の眠りを妨げるほど日増しに騒音は激しくなっていきます。

夜な夜な続く霊のしわざと思われる不気味な物音。それだけであるなら、単なるどこにでもありそうなゴースト・ストーリーの1エピソードでしかなく、特に人々の大きな注目を集めることもなかったはずです。

だが、フォックス家のそれは、エイプリール・フール前夜の3月31日を境として、思わぬ方向へとシフトしていきます。

それは母マーガレットと2人の娘マギーとケイトが、ある奇妙なゲームを試みたことからはじまります。それは次のようなものです。

いつものように不可思議な叩音が聞こえはじめます。それに対して、少女たちは指を鳴らし、その音を模倣します。さらに妹のケイトが手を叩き、叩音を起こしている何者かに向かって、自分と同じようにするようにと命じました。すると次の瞬間、驚くべきことにも、彼女が叩いた音と同じ数だけ叩音が続いたのです。

次に姉のマギーが「今度はわたしがするのと同じようにして」と述べ、数をカウントしながら手を叩くと、再び叩音はそれに従いました。

娘たちに続いて母マーガレットも、10回、音を立てることを命じました。再び10回の叩音が続きます。さらにマーガレットは次のステップへと踏み出します。

彼女は叩音の主に向かって、子供たちの年齢を尋ねてみました。そうすると、再びその数を正確に表すラップ音が鳴りました。このとき彼女は、叩音の背後になんらかの知的存在が介在しているのではないかと確信します。そこで彼女はその正体を突き止めるため、叩音を起こしているなにものかに向かってさらに質問を重ねていきました。そのときの模様をマーガレット自身は次のように述べています。

「次にわたしは、その音を起こしているのが人間かどうか、そしてもしそうなら、同じ音によって示すようにと尋ねました。音はありませんでした。

次にわたしは、それが霊なのかどうかを尋ねました。そしてもしそうなら、2回、音を立てることによって示すようにと。そう言うやいなや、すぐに2回、音が聞こえてきました。

次にわたしは、怪我を負わされた霊なら音を発するようにとお願いしました。そしてわたしははっきりとした音を聞きました。

次にわたしは、この家で怪我を負わされたのかどうかを尋ねると、そうだということが音で示されました。加害者は生きているかどうかを尋ねると、同じ答えが得られました。

さらにわたしは同じ方法によって、その遺骸が家の下に埋められていて、年齢がいくつだったのかを突き止めました」

20時頃、マーガレットは夫のジョンに隣人を呼び集めるよう依頼した。そして21時頃には、1ダース以上の好奇心溢れる人々がフォックス家へと集まりました。その間も、霊は叩音を出すことで質問に答え続けます。


近所に住んでいたウィリアム・デュースラという男性が率先して質問をすることで、その霊の正体について、次のようなことがおおよそ明らかになります。

生前、その霊は「行商人」として生計を立てていた。だが、5年前の火曜夜12時、かつてこの家に住んでいたジョン・C・ベルという人物によって、肉切り包丁で喉を掻き切られて殺された。殺人の動機は500ドルという被害者の所持金。男の死体は地下室へ運ばれ、10フィート下の大地に埋められた等。

当初、デュースラは懐疑的でした。そこで彼は霊からの情報が正確であるかどうかを確かめるために、自分自身や彼の妻、そしてこのとき一緒に訪れていた隣人のハイド夫妻の年齢、近隣の家族の子供の数と死んだ人の数などを尋ねてみます。すると、それらいずれの問いに対しても、正確な数のラップ音が返ってきました。


さらにデュースラは、殺された人物の名前を知るために、霊との新たな交信方法を試みました。それはデュースラがアルファベットを読み上げていくのに対して、正しいところに来たとき、霊に叩音を発してもらうというものでした。それによって、その霊の名前がC. B.というイニシャルだということが明らかとなりました。

この夜の出来事は、すぐに口伝えに広まり、翌日の土曜日には、フォックス家の小さな家が近隣から数百人の好奇心に満ちた訪問者たちで溢れかえることになります。

その日の19時頃、再び霊は叩音を開始します。

いかさまが行われる可能性を封じるため、数人のグループが家の様々な場所に分散して事態を見守りました。ある意味、霊は非常に辛抱強い性格だったと言えます。というのも、次々と訪れる見物人の年齢、子供の数などといった瑣末な質問に答えるべく、叩音を起こし続けたのです。すなわち、本来の目的であったはずの無念の殺害事件の主張とは関係のない質問に対しても、叩音の主は嫌がることなく応答したわけです。

もし霊が単に家に憑いていたものだったなら、その後、フォックス家の借家は、有名な幽霊出現スポットとして知れ渡るようになったのかもしれません。けれども、霊は場所を移動しました。ハイズヴィルから息子のデーヴィッドの家へと引っ越したフォックス家の後を追って

今度は引っ越し先のデーヴィッドの家で叩音がはじまります。

そこで家族は、叩音がマギーとケイトの2人の娘がいる状況でのみ発生するのではないかと気づきはじめます。そこで家族は、2人の姉妹を別々に住まわせるべきだという結論を下します。そしてロチェスターに住んでいた長女のリアが、妹のケイトを自宅へと連れて帰ることになります。

けれども、それも無駄でした。

マギーだけが残ったデーヴィッドの家でも、叩音は相変わらず続きます。そこでは殺害された行商人とは別の霊たちが騒音をあげはじめました。一方、殺された行商人の霊はケイトについて行きました。

その後のケイトの周りで起こる不可思議な現象の数々については、後年出版されたリアの自伝『ミッシング・リンク(The Missing Link)』(1885)の中で詳しく述べられています(これは引っ越したばかりのロチェスターのリアの家で起こった現象について描写した唯一の記録ですが、他の箇所において、明らかな虚偽や意図的な書き換えなどをはじめとする不正確な引用を含むため、出来事を客観的に記述したソースとしては、いささか信用の置けるものではないということを断わっておきます)。

たとえば、リアは自宅へ帰った後、リアの娘エリザベスとケイトが一緒に庭へ出て行った後に起こった出来事を次のように述べています。

突然、まるでバケツの中の凝固した牛乳が天井から降って来て、窓の近くの床にぶちまけられたかのような、ものすごい音が聞こえてきました。その音はすさまじいだけでなく、まるですぐ近所で大きな大砲が発射されたかのように窓や家全体を振動させるほどのものでした。

リアの証言によれば、ケイトの周りでは他にも様々な奇妙な現象が続出しています。冷たい手が娘たちの顔や体に触れ、顔の上にマッチ箱が振り落ち、別の部屋のテーブルがあちこち動き回り、ドアが開いたり閉ったりする等々。

ハイズヴィルからロチェスターへと2人の姉妹とともに、場所を移したポルターガイスト。その一連の騒ぎが意図するところは、もはや誰の目にも明らかでしょう。

あの世からこの世へと死者の霊が何かを伝えようと躍起になっている。

だとしたら、なすべきことは1つ。積極的に霊とコミュニケーションし、そのメッセージに耳を傾けることでしょう。

19世紀後半に大流行する交霊会の最初の形は、まさにここからはじまっていったわけです。

その後、フォックス姉妹を中心とした霊とのコミュニケーションは、数百人を集めたホールでのデモンストレーションをはじめ、合衆国北東部をツアーして周り、非常に大きな話題を集めます。当時の記録を読むと、まさしくフォックス姉妹はセレブリティとして人々の間で大きな脚光を浴びていたことがわかります。また、その話題が大きくなるに連れて、フォックス姉妹以外にも、霊を発現させることのできる「ミディアム(霊媒)」と呼ばれる人たちが、各地に続々と出現するようになります。

もちろん、フォックス姉妹や他のミディアムたちの周りで起こる霊現象を、疑ってかかる人、あるいはまったく信じない否定派の人々もいました。さらに、当時の新聞などのメディアは、こぞってフォックス姉妹を辛辣に批判し続けています。また、インチキやトリックを暴こうとする試み、または科学的態度による解明も、様々な人によって行われました。その辺りの喧々諤々の様相については、また別の機会に紹介したいと思います。

それは本当に霊とのコミュニケーションだったのか?

その真偽はともかくとして、近代のスピリチュアリズム・ムーヴメントが、ここからはじまったことは事実です。すぐにそれはイギリスをはじめヨーロッパへと飛び火し、そしてここ日本にもやって来たというわけです。


Wiki:Fox sistersEarthpulse Blog

(伊泉龍一)


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