美しすぎるミディアムはいかにして偉大な科学者たちを欺いたか【前編】―スピリチュアル史解説[コラム]
掲載日時:2011.02.18 18:00
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掲載日時:2011.02.18 18:00
過去に活躍したミディアムたちの記録を調べていくと、その中にひときわ目立つ美貌と魅力と才能を持った女性がいます。
「言葉に絶する出来事」という謳い文句で自らの交霊会を宣伝し、ホールに大勢の人々を集めて、見事な「霊現象」を披露したアンナ・エヴァ・フェイです。
「歴史の中で最も才気に富んだミディアムの1人」。かの有名なエスケープ・マジシャン、フーディーニにそう評された、19世紀後半から20世紀初頭に活躍した1人の女性ミディアム、アンナ・エヴァ・フェイについて、今回は紹介していきたいと思います
※アンナ・エヴァ・フェイの伝記的情報はBarry H. Wiley, The Indescribable Phenomenon: The Life and Mysteries of Anna Eva Fay, (Seattle: Hermetic Press, Inc., 2005) を参照しました。
本名アン・エリザ・ヒースマン。オハイオ州サジントンに1851年2月3日生まれ。幼くして家を飛び出したアンナは、自活していくための道として、プロフェッショナルのミディアムとしてのキャリアを選びとります。
やがて夫となるヘンリー・カミングス・フェイと知り合い、パートナーシップを結成。そしてマネージャー兼ディレクターとなったヘンリーと共に、アメリカ各地を回り、数々の交霊会を成功させ、その名を高めていきます。
1874年5月には、イギリスへと進出し、まずはグラスゴーとエジンバラで交霊会を開始。さらに同年6月5日にはロンドンへと進出します。
ちなみに、アンナは家の応接室で少人数を前に無料の交霊会を行う、いわゆるプライベート・ミディアムではなく、大勢の人々をホールに集め、入場料を取るプロフェッショナルとしてのミディアムでした。
当時の彼女の交霊会の出し物は、1860年代にプロフェッショナルのミディアムとして最も成功を収めたダベンポート兄弟のパフォーマンスと似たタイプのもので、およそ次のようなものでした。
キャビネットの中に入ったアンナは、椅子に縛り身動きできなくされる。その状態で、助手がアンナの膝の上に輪を置く。そしてキャビネットのカーテンが閉められ、すぐさま再びカーテンが開けられると、輪はアンナの首にかかっている。
次にアンナの膝の上にギターが置かれ、再びカーテンが閉められると、すぐさま弦がかき鳴らされる音が聞こえてくる。さらに助手が今度はギターを床の上に置き、カーテンを閉めるとハーモニカや他の楽器も「霊の音楽(スピリット・ミュージック)」の演奏を始める。
さらにキャビネットの中から釘がコツン、コツンと打ち込まれる音が聞こえてくる。紙とハサミが置かれると霊が紙を切り、人形の形の連なりが作り出され、椅子の傍にあった手桶がアンナの首にぶらさがる。
最後には、アンナの膝の上にナイフが置かれ、カーテンが閉じられると、ほんの数秒後に縛っていた結び目が切断された状態で、彼女はキャビネットから人々の前へと表れ出て、ショーは終了する。
これらアンナのパフォーマンスは、今日から見れば、明らかに単なるマジック・ショーではないか、と疑わせるものです。ですが、その驚くべきところは、そのカーテンが閉じられてから開けられるまでの間が、ほんの瞬時のことだったところにあります。
ところで、イギリスでのアンナの名声をさらに高めることになるのは、こうしたショーだけでなく、これまで数多くのミディアムの能力を調査してきた高名な科学者ウィリアム・クルックスとの実験によるものでした。
1875年の2月、実験のためクルックスの自宅を訪れたアンナは、電流計の装置につながれた状態で、その能力をテストされることになりました。同月の5日、6日、19日、25日の4回に渡って実施された実験の内、ここではその中でも最も詳細な記録が残っている19日の出来事を紹介しておきます。
※コックスとクルックスそれぞれの実験の報告は、Edward W. Cox, The Mechanism of Man: An Answer to the Question, What Am I? A Popular Introduction to Mental Physiology and Psychology vol. II, (London: Longman and Co., 1879), pp. 446-450; William Crookes, A Scientific Examination of Mrs. Fay's Mediumship, in The Spiritualist(March 12, 1875), pp. 126-8. より
この日の実験には、19世紀最高のミディアムとして名高いダニエル・ダングラス・ホームをウィリアム・クルックスが実験した際にも立ち会った天文学者のウィリアム・ハギンズ、法廷弁護士のエドワード・W・コックスをはじめ、その他、遺伝学者でダーウィン主義者のフランシス・ゴルトン、『スピリチュアリスト』の編集長ウィリアム・H・ハリソン、さらに実業家のコンスタンチン・A・イオニデス(後にフランスの彫刻家オーギュスト・ロダンのイギリスでの最初のパトロンともなる人物)が参加しました。
実験室と書斎の間のドアはカーテンで仕切られました。そして、書斎の方はアンナが1人で閉じこもるためのキャビネット代わりの部屋として使われました。アンナはそのドアの仕切りの辺りの椅子に座りました。アンナのその場所は、クルックスのデスクからはおよそ4フィート、バイオリンが置かれたテーブルからはおよそ8フィート、本棚からはおよそ12フィート離れていました。
実験の開始前に、アンナの手はブライン溶液に浸され、その後、同じくブライン溶液が染み込まされたリンネンで覆われた2つの真鍮の取手を握らされます。取手につながれたワイヤーは、壁を伝いクルックスをはじめとする実験者たちのいる部屋にある抵抗コイル、バッテリー、検流計へとながっています。
もしアンナが両手を取手から外したなら、検流計を見ている人には電流が途切れたことが一目瞭然となります。すなわち、交霊会の参加者たちは、この装置によって、なんらかの現象が起こったときに、アンナが自分の手を使ってインチキを行っていないかをチェックすることができる、というわけです。
20時55分、アンナが装置の取手を握っているのを確認した後、書斎の照明が消され、実験は開始されました。ウィリアム・クルックスとエドワード・コックスそれぞれの記録をもとに、その結果をまとめてみましょう。
20時56分。書斎の中でハンドベルが鳴り始めた。
20時57分。アンナから最も離れた場所――およそ3フィート離れているカーテンの仕切りから手が出現した。
20時59分。明らかにアンナであると思われる声が言った。「わたしはあなたに渡ししたいものがあります」。カーテンの隙間から出てきた手が、ウィリアム・H・ハリソンの編集している『スピリチュアリスト』を本人に渡した。
21時ちょうどに声は言った。「弁護士よ、わたしはあなたのために手に入れたものがあります。ここにいらっしゃい」。再びカーテンから出てきた手は、エドワード・W・コックスの著書『わたしとは何か(What Am I ?)』を差し出した。
ちなみに、このときコックスは片足でカーテンを開け、中を覗きました。そして、そこで見たものをコックスは次のように報告しています。
「そこにはサイキック、もしくは彼女のまさしく複製が立っているのが完全に見えた――同じレースのついた同じサテンのドレス、同じく長いカールした髪だった。本が渡される際に、手がわたしに触れた。それは暖かく、湿っていて、肉付きがよかった。そして指には同じ指輪があった」
ちなみに、このときコックスは椅子の上に装置の取手を握ったままの人物がいるのも確認しています。残念ながら、暗がりのため、コックスはその人物がどんなドレスを着ていたかまでは確認できていません。
21時1分。声は言った。「ここにあなたのためのものがあります。天文学者よ」。今度は、ウィリアム・ハギンズの著書『スペクトル分析(Spectrum Analysis)』が本人に手渡された。
21時2分。声は言った。「ここにいらっしゃい旅行者よ。あなたにプレゼントがあります」。フランシス・ゴルトンがカーテンに近づくと、彼の著書『旅行術(Art of Travel)』が本人に渡された。
21時3分。コンスタンチン・A・イオニデスが尋ねた。「あなたはわたしには何もお持ちではないのですか?」声は言った。「ここには本よりも、もっとあなたが好むものがあります」。次の瞬間、煙草の箱がイオニデスへと投げられた。それはクルックスのデスクの鍵をかけられた引き出しの中に入っているはずのものだった。
21時4分。5フィート離れた炉棚の上の置時計が、カーテンを通して渡された。
21時4分30秒。検流計を見ていたクルックス以外の観察者たちは、カーテンを開けて、立っている完全な人間の姿を見た。
21時5分。これまで異常を示すことのなかった検流計が、ついに電流のとぎれたことを示した。
この後すぐに、クルックスをはじめ参加者たちは、書斎へと駆け込みました。そこには頭を肩へとうなだれ、両手を垂らし、椅子に崩れ落ちたアンナの姿が発見されました。
クルックスいわく、アンナは「意識不明もしくはトランス」の状態で、その後、意識が戻るまで30分間を要しました。意識を回復した後、アンナはお茶を飲み、馬車を呼び、男性たちからのエスコートの申し出を断り、滞在先のブルームスベリー・スクエアのホテルへと1人帰っていくこととなりました。
実験自体は、ほんの10分程度の間のことでした。けれども、その間に起こった現象は、参加者たちに説明することのできない深い謎を残すものでした。
検流計につながれて動けない状態の中で、いかにしてアンナはそのようなことを成し得たのでしょうか? あるいはやはりそこにはアンナ本人とは別の霊の力が介在したということなのでしょうかーー?
(伊泉龍一)

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